京の街角 姉小路界隈ヨリ 33号

京都市長  門川 大作氏 近影

巻頭言

地域の力

他の地域にも、大変参考になることが詰まっている姉小路の活動。
京都市だけでなく、全国、全世界にも、その取組をご発信くださいますよう、切に願っています。─

京都市長 門川 大作   

「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」─ 伝教大師最澄の著した「山家学生式」に、こんな言葉があります。

自分自身、あるいは自分の置かれた場所をより輝かせる地道な努力を重ね、周囲の共鳴を呼び、やがては社会全体を明るく照らす。その志と行動こそが何物にも代えがたい宝であるとの教えですが、私は毎年皆様の「姉小路行灯会」に伺う度にこの言葉を思い浮かべます。

お一人お一人が心を込めて手作りされた、6百基もの行灯の灯が美しく浮かび上がらせる宵の姉小路界隈。その幻想的な光景を拝見すると、同時にこんな思いが去来します。昔ながらの風情に満ちた景観を高いお志の下でしっかりと守り、界隈を、さらにはまち全体を照らしておられる皆様は、まさに京都の宝であり誇りだと。

まちづくりの先進をゆく姉小路 ─ 昔ながらの風情を失わずにいるのは、取組の賜物

改めて振り返れば、平成7年の発足からの「姉小路界隈を考える会」のたゆみない御取組は、地域の発展と景観の保全を調和させた京都のまちづくりを、常に力強く牽引してこられました。一昨年に10周年の節目を迎えた建築協定や、平成16年から取り組んでこられた「街なみ環境整備事業」など、皆様の熱意溢れる御活動によって、年を追うごとに界隈の魅力が高まり、ひいては、それが京都のまちの品格をも高めていると、実感しています。

古き良きものを守り伝える、最先端のお取組。「自分たちのまちは自分たちでつくる」という京都の自治の伝統を確かに受け継がれ、優れた「地域力」「人間力」を発揮して、皆様が数々の素晴らしい御活動を積み重ねておられることは、誠にありがたく、心強い限りです。改めて、深く敬意と感謝の意を表します。

行灯会にて昨年の7月には、皆様が地道な調査や御議論を重ねて取りまとめられたまちの将来像とまちづくりの方針を、本市都市計画マスタープランの「地域まちづくり構想」として位置付けが叶いました。さらに同年8月、そうした皆様の明確なビジョンに基づく「姉小路界わい地区地区計画」が、都市計画審議会で満場一致により承認され、本市も都市計画決定を行いました。

今後これらにより、皆様と共に知恵と力を合わせて、「京都に、姉小路界隈に住んでいてよかった」、「京都を、姉小路界隈を訪れてよかった」と心から実感いただけるまちづくりを、更に大きく前進させてまいります。引き続き、皆様の御支援、御協力をお願い申し上げます。(写真右 行灯会でご挨拶)

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また、皆様が地域への熱い想いを胸に果敢に行動され、積み重ねてこられた御実績は、同様に熱意を持ってまちづくりに取り組んでおられる方々にとっても、学ぶところの大変大きなものだと思います。これからも皆様が、次代を担う子どもたちや、今後新たに御町内に入られる方々はもちろん、他の地域、さらには国内外にまで広くお取組を発信され、まちづくりの輪を大きく広げてくださることを念じています。

行灯会でのブラスバンド演奏